【更新版】ハワイ不動産 – 減価償却による節税について

2019年12月12日に税制改正大綱が発表され、海外不動産節税スキームにメスが入ることがわかりました。
2021年度以降影響があるのは個人名義での所有物件で、法人所有の場合は影響がありません。

当記事は、日本とハワイの両方の税務に詳しい、税理士法人アーク&パートナーズ代表税理士の内藤克氏と弊社Hawaii Livingとのコラボレーションにより作成致しました。
2019年12月に発表された改正案の概要と今後当面影響がない法人名義での海外不動産所有による減価償却による節税スキームについて、Q&A方式でわかりやすく纏めました。節税など税務関連でご質問がございましたら内藤税理士にお問い合わせ願います。




【2019年12月に発表された改正案の概要について】

Question 1
2021年から減価償却節税ができなくなるという話ですが改正の内容を教えてください。
Answer 1
2015年度の会計検査院報告で「海外不動産に中古耐用年数の特例を使った節税は不公平」との指摘を受けて、自民党は節税封じの改正を決定し、2021年分の所得税から改正案が適用される見込みです。(2020年3月に国会を通過する予定)
この改正は所得税の損益通算、つまり不動産所得の赤字(海外不動産から生じる減価償却費)と給与を相殺する計算方法を認めなくするもので、「耐用年数」や「中古資産の残存年数の見積方法」を改正するものではありません。したがって法人の節税で所有する方には影響はありません。この改正を受けて現在減価償却費で不動産所得を赤字にしている場合には2021年以降売却するのか?保有するのか?法人に移行するのか?検討しなければなりません。


Question 2
改正されたあと売却したいのですが、今回の改正による影響はありますか?
Answer 1
改正された後、減価償却費のうち損益通算できなかった部分の金額は所得計算上切り捨てられることになります。このため節税目的で所有している方にとっては魅力に欠けるものとなりますが、利回りの良い不動産であれば保有し続けるという選択肢もあります。それは切り捨てられた赤字が譲渡時に経費化できるからです。
減価償却自体は時の経過とともに進みます。譲渡益=譲渡額-(取得価額-減価償却累計額)-譲渡費用と計算するため、減価償却が進むということは値上がりがなくても譲渡益が発生することになります。しかし今回の改正では救済措置として損益通算できずに切り捨てられた減価償却費は譲渡所得の計算上経費にできることになりましたので、必ずしも急いで処分する必要はなくなりました。改正により値下がりが始まったり、借入金で投資している場合などは金利負担を考えて判断することになります


【法人所有物件の減価償却関連Q&A】
Question A
日本の法人が不動産を購入することにより、どのように節税することができるのか、また、なぜ日本ではなくハワイで不動産をご購入される法人が多数いるのかについても教えて下さい。
Answer A
日本法人の税務申告は、たとえ海外取引であっても「日本の税法のルールに基づき」計算することになっています。
注目されている中古資産の減価償却の計算では、残存年数(あと何年使えるか)を見積もって償却期間を計算します。これは「使い古した資産は新品と同じ耐用年数ではおかしい」という考え方に基づいていますが、ほとんどの場合、納税者が残存年数の見積もりをすることは困難のため、国税庁長官が発令した通達いわゆる「早期償却耐用年数」に基づき計算することになります。これによるとすでに耐用年数を過ぎた建物に関しては法定耐用年数の20%の年数(47年→9年)で計算してよいことになり節税効果が期待できるのです。
時が経過している割には快適で長持ちするハワイ不動産、特に建物比率が高いものについては短期間で減価償却できる人気物件となっております。


Questions B
木造と鉄筋コンクリートの物件はそれぞれ最短何年で減価償却しますか?
Answer B
木造建物(住宅用)の耐用年数は22年、コンクリート建物(住宅用)の耐用年数は47年、コンクリート建物(ホテル用)は39年と定められているため、これらの期間を過ぎている建物についてはそれぞれ4年、9年、7年で減価償却することになります。


Question C
不動産売却にかかる税率は売却する保有年数によって異なるかと思いますが、詳しく教えて下さい。また、法人の税率も教えて下さい。
Answer C
法人の場合は、分離課税は存在しないため、所有期間も関係ありません。譲渡益が生じてもその法人の営業利益などと合計して課税所得を計算することになります。税率は34.6%(資本金により軽減されます)となっています。


Question D
ハワイで購入した物件を日本とアメリカ双方で、減価償却による節税効果を得ることができますか?簡潔に仕組みを教えて下さい。
Answer D
日本の減価償却税制についてはすでに述べたとおりですが、米国においては中古資産についても新品と同じ償却年数となりますので早期償却の効果は期待できません。
そのため取得後数年後からハワイでの申告時に納税が生ずると思われます。よくハワイで納税した金額は日本で還付を受けられるのかという質問を受けますが、日本の所得税の申告上「外国税額控除」を受けることができるのは外国(ここではハワイ)で生じた所得に対応する金額とされているため、ハワイ不動産で減価償却効果による赤字を生じさせているうちは控除できません(経費には計上できます)。


Question E
普段は貸し出しているハワイの物件を、例えば年間30日間オーナーが利用した場合、所得区分や減価償却のスキームに影響がありますか?
Answer E
オーナーが利用した期間は事業供用されていないため、その期間の減価償却費は経費になりません。これは個人事業主が所有する自家用車を配達用50%自家用50%の割合で使用していた場合に50%しか経費として認められないのと同じで、このケースでは30日分の減価償却費つまり一か月分は必要経費不算入となります。


Question F
もし所有者が物件の貸し出しを行わず、且つ、所有者の利用も全くなかった場合でも、減価償却による節税効果を受けることはできますか?
Answer F
募集をかけてもうまく賃貸人が決まらない場合などは家賃収入が入ってきませんが、募集も賃貸事業の一環であるため、減価償却費の計上は可能(たとえば引き渡しを受けてから賃貸開始までなど)となります。
しかし当初から貸し出しの意図はなく、キャピタルゲイン狙いの場合は自家用別荘と同じく減価償却は認められません。


Question G
物件を購入前にどのような出口戦略を考慮すべきか教えて下さい。
Answer G
購入時に、購入目的をハッキリさせておく必要があります。ハワイ不動産を購入する方の購入動機は
①減価償却節税が目的
②キャピタルゲイン目的
③運用利回りが目的
④分散投資
⑤別荘、
の5つに分かれます。また「賃貸利回りは不十分であったが値上がりした」や「値下がりしたが円安になったため手取りは増えた」など当初の目的とは別の効果を得られることもあります。出口戦略を立てるには購入目的をまずはっきりさせ、そして保有している間に「戦略通りに進んでいるのか?」、「軌道修正は必要ないのか?」を常に意識する必要があるということです。「購入したはいいけれどあとは人任せ」では十分な投資効果は得ることができません。


Question H
法人の場合の節税メリットについて教えて下さい。
Answer H
法人の場合、オーナー会社であれば、役員報酬を抑えて法人の利益対策として減価償却節税をすれば、所得税対策と同じ効果が得られます。





※   税務に関しては、必ず税理士にご確認下さい。
※ 投資にあたりましては、当Webサイトの情報に全面的に依拠されることなく、リスクのあることを認識し、ご自身の判断において行われるようお願いいたします。
※ 当記事で記載した内容は、2020年2月時点のもので、今後税制改革により変更される可能性があることをご理解願います。