ホノルルボードオブリアルターズのご厚意により、2018年5月9日、ハワイ不動産市場に焦点を当てた景気の先行きについて地元エコノミストTZ Economics(ティーズィーエコノミクス)ポールブリューベイカー氏の見解を伺う機会がありました。
私がポールに初めて会ったのは2000年、彼がオアフ島一軒家の中間販売価格が7年以内に倍以上になる、という大胆な予測を立てた時期でした。2007年、驚いたことに彼の予測は現実のものとなります。以来、弊社は洞察力ある彼のプレゼンに注目しています。
ポールのプレゼンは、2018年5月4日に発表された下記に示す最新の経済指標に基づくものです。
1) アメリカ失業率が前例のない3.9%に低下
2) 賃金上昇率:2.6%
3) インフレ率:1.9%
これらの指標は、経済の強い前進を示しています。以下は2018年5月9日のポールのプレゼンを主観的にまとめた要点です。なお、すべての添付グラフはティーズィーエコノミクス ポールブリューベイカー氏のものを引用しています。
現在アメリカ経済は9年連続で成長を続けており、これは歴代2番目に長い経済成長です。この動向が来年まで継続すれば、アメリカ史上最も長い連続成長となります。アメリカ経済の成長率が2.2%であるのに対し、ハワイ経済は全国平均よりやや低めの1.6%にとどまっています。
経済が安定しているにも関わらず、ハワイ不動産市場には脆弱性が認められます。需要が軟調する可能性があり注意が必要です。
ポールはホノルルボードオブリアルターズが発表した直近のデータから以下の3点に触れました。
1) 2009年以降、中古住宅販売高は安定。但し、かつてに比べると減速傾向に。バブル景気なし。
2) 「発売中物件一覧掲載月数」は安定。過去5年間は平均2.8~3.0か月、過去3年間においては2.1~2.3か月と著しい低水準。
2012年以降、低い「発売中物件一覧掲載月数」は、もはや極端な価格上昇のけん引役とはなっていません。以前からの反比例の法則は当てはまらず、掲載月数が2~3か月であっても劇的な価格上昇につながるわけではありません。
3) 2009年以降、査定額は緩やかに上昇。コンドミニアムで5.2%、一軒家で4.4%と安定。急激な変動なし。
2度のバブル(1990年の日本、2007年のサブプライム)以降、オアフ島の中古住宅価格の上昇率は4~5%の長期的な安定傾向にあります。しかし、近いうちにそのトレンド曲線に何らかの変化が起きるのでしょうか?長期トレンドが3%になることがあるのでしょうか?
ホノルルの安定的な住宅価格上昇率はもはや歴史的で、アメリカ全土の都市住宅価格上昇率と比較すると抵抗力もあります。2009年以降のホノルルの住宅価格上昇率は、インフレ率を考慮しなければ6.4%(2%のインフレ率を差し引いた実質価格上昇率は4.4%)です。ホノルルに関しては日本のバブル期とサブプライムバブル期に、アメリカ全土ではサブプライムバブル期に上昇率軌道から外れたことが見て取れます。
インフレ率適用:実質住宅価格上昇率は2.2%で長期的に落ち着いています。
オアフ島中古住宅市場状況の要点:
成長、上昇率は安定しています。販売物件数と新築物件数の相殺バランスも良いでしょう。だたし、いくつかリスクも存在します。
問題発生の兆し?
最新の統計データによると、ハワイ州は2017年末時点で人口流出がおきている8州のうちのひとつです。2017年、ハワイは久々の人口減少に見舞われました。人口流出データは、すべての出生、死亡、移住を差し引きして算出されています。
この兆しには注意が必要で、このトレンドが続くようであれば、市場は減速、住宅価格及び賃貸は軟調が予想されます。
住宅取得能力については、変化はありません。ベビーブーム世代はハワイから引っ越していっているのでしょうか?
オアフ島の実質GDP成長率は2020年までに0.6%まで減速する可能性があると予想されています。
連邦市場公開委員会の2017年会議で出席者見立てた今後のフェデラルファンド金利です。2020年の予想金利は行き過ぎでしょうか?
ハワイ観光産業の実績:観光客数が記録を更新、観光客支出額は記録更新ならず。
観光客の支出額が低迷することでハワイのGDP成長率に影響が出る恐れあり。
まとめ
ハワイ経済は転換点を迎えている可能性があります。景気拡大、不動産市場ともに減速しやすい状況にあります。
本レポートを2017年、2016年のレポートと比較してみてください。