―先週、KITVチャンネル4のニュースリポーターから電話があり、短期賃貸ができなくなったことにより経済的な影響を受けているホームオーナーについて取材を受けました。弊社のブログ記事ホノルル市議会条例89号-オアフ島短期バケーションレンタル新規制法を見て新規制法に対する私の見解が不明だったのです。このリポーターは、法改正の不意打ちにあいその結果ストレスをためているクライアントを弊社が抱えているのではないかと思ったのです。
リポーターは、記事をしっかりと読んだわけではなくざっと流し読みしたと言い、「長い記事を読む時間ある人などいない」と言っていました。-少なくとも今この記事を読んでいるあなたは弊社の記事が有益だと感じてくださっていることを願います。
リポーターには、記事の中で表明したとおり「私は法に対し賛成でも反対でもありません。弊社のクライアントには法の順守を勧めています。短期賃貸の規制に驚愕しているクライアントはいません。規則は数十年間変わっておらず、唯一すぐにでも起こる変化といえば法執行の差し迫った脅威のみです。Hawaii Livingでは物件オーナーの皆様に当初から不動産について学んでいただいています。「知らなかった」と主張する人は単に正しい質問をしていなかっただけなのです。情報は弊社のホームページに直ちに掲載されます。」と説明しました。
私はこのリポーターが、何も知らない物件オーナーが経済的苦難に陥るようなドラマティックな話を期待しているとすぐに感じました。私では力になれないと思い別の不動産業者をあたるよう丁重に提案しました。
The Tyranny Of Small Decisions(小さな決断の暴虐)
変化は思いがけない結果を生むことがあります。また、合理的で小さな決断の連続が時に巨大で予測不能なマイナスの結果を導くこともあります。これをThe Tyranny Of Small Decisions(小さな決断の暴虐)と呼びます。
これは、徐々に進んだ環境汚染を浄化するのに数倍の労力が必要となる原理と同様です。また、政府がぎりぎりのところで税法を微調整することにより結果的に信じられないほど膨大で複雑な税法となってしまう原理も同様です。
ほんの微々たる甘いスナック菓子が徐々に体重増加につながるのもそれにあたります。クレジットカードによる衝動買いで利用額がだんだんと膨れ上がり金銭トラブルに陥るのもこれが原因です。
同じ原理が多くの非合法短期賃貸のまん延を生みました。アエビーアンドビーやVRBOのような予約サイトは、ユーザーエクスペリエンスの向上、信用基準の緩和、クリティカルマスへの達成、住宅地全体のトランスフォームと提供するサービスを微調整しました。簡単、便利、実用的、そして儲かる。うまくいかないわけがない?
短期賃貸規制のきっかけは何であれ、法執行により当然何らかの経済的な影響があります。
市条例19-18(第89号法案)による経済的波紋
長期的な経済への影響を正しく予測するのは不可能です。未知の変数があまりにも多すぎます。2019年6月25日に市条例19-18(第89号法案)が可決されてから3か月が経ちました。ここではこれまでに起きたことを分析します。
短期賃貸で収入を得ていたホームオーナーは、現在下記のいずれかの対応をとっています。
- 以前と同様の短期賃貸を経営し、裁判所への出頭命令が出るまでのいちかばちかで運営しています。出頭命令を受け取るとオーナーは賃貸広告を中止するまたは内容を変更します。しかし、すでに入っている予約分はサービスを提供します。本稿寄稿時点では、罰金を払った人がいるとは聞いていません。
- 投資物件を売却するオーナーや合法短期賃貸物件を積極的に購入するオーナーもいます。合法的に短期賃貸できる物件の一覧を弊社のホテルコンドガイドでご紹介しています。長期的ビジョンを持つ抜け目ないバイヤーたちは魅力的な価格のホノルルの一軒家やコンドミニアムを購入しています。
- 所有する物件を個人的な楽しみに利用しているオーナー
- 1テナントあたりの賃貸期間を30日以上とする長期賃貸へ切り替えるオーナーもいます。
- 複数の短期賃貸をひとまとめにし30日以上の賃貸枠とするなど法の網を潜り抜ける手段を見つけたオーナーもいますが、これは合法的ではなくあくまでも見つかりにくいだけにすぎません。
オアフの物件価値が値下がりするのではと考える人もいます。我々は未来を見通しているわけではありませんが、投資家がハワイ不動産からあわてて手を引くとは考えられません。5年後に現在を振り返った時、オアフ島の物件価値に関する法律が与える総合的な影響はグラフ上のわずかな変動にすぎないかもしれません。
ただし、下記に注目しておくべき例外を挙げておきます。
ノースショア
ノースショアにあるすべての一軒家のうち25%は新規制法が施行される以前から非合法短期賃貸をしているとされています。ここ最近、販売在庫が増えました。弊社ではノースショアの一軒家の価格が軟調となりしばらくの間は絶好の買い時になると予想しています。
その他のほとんどの住宅地では規制法による影響はわずかにみられる程度です。
「ハワイバケーションレンタルオーナー組合」は2019年8月2日連邦地方裁判所に訴訟を起こしました。組合の弁護士グレッグクグラーは条例に「致命的な欠陥がある」とし「オアフ島の合法賃貸物件オーナーや運営者に直接壊滅的な影響があり、アメリカ合衆国憲法およびハワイ州憲法の捜査押収、適正手続き、不動産、プライバシー、言論の自由の条項に違反している」と主張しています。訴訟は企画・許可局の規制法施行への暫定的差し止め命令を求めています。
2019年10月4日更新情報:2019年8月2日「 ハワイバケーションレンタルオーナー組合 」の訴訟は解決しました。裁判官の命令と判決はここに要約されています。
ワイキキ
多くの合法ホテルコンドはワイキキにあります。その中には販売価格が顕著に上昇し、以前よりも早いペースで売れています。ワイキキのNUCユニット(バケーションレンタル事業許可証を持つユニット)はすべて買いつくされていて、直近で販売されたワイキキバニヤンのNUCユニットは750,000ドルという途方もない価格で売れました。
最近はここ数十年で初めてNUCユニットに超高額評価がついています。またNUCのないユニットが安売りされています。ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットでは劇的な価格格差が生まれています。その原因は・・・
ワイキキバニヤン、ワイキキサンセット
弊社のブログ記事Guide to Condotelsでは合法的に短期バケーションレンタルが可能な建物を5つのカテゴリーに分類しています。そのうちの4番目に、
D) ホテル運営が行われ規制対象外ホテルとして除外されていない「アパートメント」に分類される区画=ユニットごとにNUCが必要でNUCがない場合は短期賃貸ができない。
としています。
このカテゴリーに当てはまるのはワイキキバニヤンとワイキキサンセットの2件のみです。
両建物ともに「リゾート混合地区」の外に立地し24時間対応のフロントデスクがあり現在のLUO(土地利用条例)が定めるホテル定義を満たしています。しかし、ワイキキが再区分された当時の旧定義を満たしていませんでした。そのため、この2件は規制対象外ホテルから除外されず、1989年にNUC免除対象にもなりませんでした。
2019年8月1日の法施行まではワイキキバニヤンの876ユニットとワイキキサンセットの435ユニットをアクアアストンが運営していました。そのうちワイキキバニヤンの197ユニット、ワイキキサンセットの256ユニットのみにNUCがあり、その他のユニットはTVU(トランジットバケーションレンタル)として許可されていません。
2019年7月23日、アクアアストンはNUCのないワイキキサンセットのオーナー約100組、ワイキキバニヤンのオーナー100組以上に文書を送り、新規制法順守のため2019年8月1日付でNUCのないユニットの賃貸を停止すると通達しました。
通達から一週間の通達で、アクアアストンが運営するワイキキバニヤンのホテル客室数は50%、ワイキキサンセットの客室数は30%減少しました。
ワイキキバニヤンで物件管理をするアクアアストンやその他の管理会社2~3社は歳入及び利益が減少したことから賃貸料についてアパートオーナー組合と再交渉を行っています。アパートオーナー組合が失う歳入は今後のメンテナンス費の増額につながると予想されています。
新規制法が施行される以前のワイキキバニヤンの一般的な販売価格はNUCの有無に関わらずパーシャルオーシャンビューのユニットで600,000ドル程度でした。NUCユニットと非NUCユニットの知覚価格の格差は取るに足らない程度です。しかし、ワイキキバニヤンのユニットのほとんどは投資家が購入しており物件価値は投資家の見込み所得に基づいて評価されています。弊社が目にしたワイキキバニヤンの損益計算書では、長期賃貸の収入が月額2,000ドルから2,300ドルであるのに対し短期賃貸は4,000ドルから4,700ドルです。
新規制法施行により、600,000ドルだった非NUCユニットの価値はフォーパドル、ビラオンイートンスクエア、シャトーワイキキなど短期賃貸が認められていないその他のワイキキにある1ベッドルームパーシャルオーシャンビューユニットと同様の400,000ドル半ばまで下落する可能性があります。
新規制法施行以来ワイキキバニヤンの販売在庫数は4倍になりました。人々がユニット価値が600,000ドルではなくなったことに気が付くまでには6か月くらいかかるかもしれません。
この価格調整に時間がかかることや一部しか公開されないことにはいくつかの理由があります。
損失回避
人間の脳は勝つことよりも負けることをはるかに嫌う性質があります。100,000ドルの収益に対する満足度よりも100,000ドルの損失に対する不快感がより大きいのです。なかには好機を待つことを選ぶオーナーもいます。彼らは損失を出して売るよりも収支が合う程度まで価格が戻るのを待つでしょう。
ヒステリシス
価格調整はその引き金となる変化から遅れをとります。この緩やかな価格調整は前年比のキャッシュフローがマイナスとなったトランプタワーのコンドミニアムで見られました。トランプタワーの一般的なシティビュースタジオタイプユニットの価格が700,000ドルから約350,000ドルまで徐々に下落しました。しかし、下落に何年もの時間がかかりました。セラーはバイヤーの関心に火をつけるため直近の最安値よりもわずかに低い売値をつけ、徐々に値下げしてきました。
感情的な購入
バイヤーのなかには実際のキャッシュフローの差異を気にせず、単にワイキキバニヤンの間取り、ロケーション、アメニティ、眺望が好きだからという人もいます。このような感情的なバイヤーにとってみれば、最近のワイキキバニヤンには多く物件から格安価格で選べる状態なのです。
楽観的可能性への先入観
アパートオーナー組合が思いがけない判決に期待を寄せて訴訟を起こしました。口頭弁論は早ければ11月となります。動向を見守りましょう。
ワイキキバニヤン訴訟
ワイキキバイヤンのアパートオーナー組合は2019年8月6日企画・許可局の局長代行を相手に訴訟を起こしました。口頭弁論は2019年11月になるとみられています。クリスポーター弁護士は市条例19-18(第89号法案)からワイキキバニヤンを免除することを求めて下記の三点を主張します。
- 経済的困難
- 企画・許可局による過去の執行力不足
- ワイキキバニヤンが「リゾート混合地区」から3,500フィート以内に立地していること。これは市条例19-18(第89号法案)21項-5(a)に関連しています。
弊社は法律の専門家ではありません。バイヤー及びセラーの不動産ニーズを満たすために全力を尽くす不動産の専門家です。弊社は、ワイキキバニヤン及びワイキキサンセットは他とは異なり特別な考慮に値すると主張するクリスポーター陣営、アパートオーナー協会に賛成です。しかし、訴状の内容は弱く、ワイキキにあるほかの6件建物でも同じことが言える内容です。
クリスポーター陣営は訴訟を進めることで金銭的インセンティブがあります。11月の口頭弁論までには訴える主張に磨きをかける時間があります。一方、企画・許可局の局長代行キャシーソクガワには金銭的インセンティブはありません。自身が手掛けた規制法ではないものの執行責任を負う現行法を擁護するでしょう。
「経済的困難」や「過去の執行力不足」を理由に局長代行に対して告訴することは、「これまで長い間違反切符を切られることなく制限速度を超えて運転していた。制限速度内での運転は手間と経済的困難を伴う。」と主張して交通警官を相手取り訴えを起こすようなものです。
3番目の「リゾート混合地区から3,500フィート以内」という主張はワイキキでは適応されません。ワイキキにA-1、A-2地区はありません。
ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットの経済的影響がかなりのものであることは同意します。しかし、訴状に書かれた3つの主張は、規制法適用からの免除を求めて判事を説得するに妥当なアプローチなのでしょうか?11月の口頭弁論で問題の解決を期待するのは希望的観測としか思えません。
今後の道筋
過去30年の間に時代は変わり、社会・経済のニーズは進化し続けています。市条例19-18(第89号法案)は2020年10月から新たな道を切り開きましたが、新しいB&Bへの道のみです。現在のところ、市議会が成し遂げたのはそれだけです。しかし、市条例19-18は再評価される必要があり、今後のニーズの変化によっては修正を加える必要があります。
直ちに検討すべき内容を下記のとおり提案します。
- ワイキキバニヤン及びワイキキサンセットは他とは異なり特別な配慮が必要な建物です。両建物は数十年にわたりLUOが定める現行ホテル定義を満たしています。
- 新規制法対象外でない限り、同様の主張ができる建物は他にありません。
- ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットはいずれもホテル利用から対象外としNUC免除とされるべきです。
1989年以来LUOのホテル定義が更新され宿泊施設としての時代遅れな条件が50%削除されたのには理由があります。旧定義は不適切だからです。NUC免除の条件として使用されるべきではありません。これは過失です。
ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットは、アロハサーフ、ハワイアンモナーク、アイランドコロニー、パームズアットワイキキ、ロイヤルガーデンアットワイキキ、アラモアナホテルコンドなど規制法対象外とされているホテルに加わるにふさわしい建物です。
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しかし、ちょっと待ってください。tyranny of small decisions(小さな決断の暴虐)はどうなったのでしょうか?ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットに有利なはずの判決が意図していない2つの結果を生み出す可能性があります。
- ゆがんだ動機-他の居住用建物には利益目的で24時間対応フロントデスクを容易に設置し、規制法適応免除を主張することができる他獲物があります。しかしそれは市条例19-18(法案89号)の価値をなくすことにならないでしょうか?最近行われたワイキキラナイの開発はこちらをご覧ください。
そのような理由で、弊社はホテル利用枠からの除外とNUCの免除となる建物は市条例19-18が施行された2019年8月1日以前にLUO現行ホテル定義を満たす建物だけが該当するべきと考えます。これによりゆがんだ動機を排除し、市条例19-18との整合性を維持することができます。 - ただ乗り問題―ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットのNUCを持つユニットオーナーは1989年以降2年に1度400ドルの手数料を支払って誠実にNUCの更新手続きを行っています。彼らの視点から見ると、NUCのないユニットのオーナーがいわば「ただ乗り」して罰則のない短期賃貸事業を行ってきたこと、さらには今後短期賃貸が認められ報酬が合法となることは不公平なのです。
残念ながらあらゆる方面で公平となる完璧な解決方法があるのかはわかりません。しかし、NUCを持つユニットオーナーを含むワイキキバニヤン、ワイキキサンセットのすべてのオーナーに利がある解決法だと考えることができます。これまでの支払っていた400ドルの更新手数料は必要なくなるでしょうし、減少したホテルの宿泊部屋数は復活し、経済的困難から脱却することもできるでしょう。
すべてを解決する方法を知っているとは言いませんが、提案内容はシンプルかつ最も実用的な双方の利益となる解決策です。
きわめて明白ですが、所有する物件がなぜLUOのホテル定義を満たしていないのか、どのように変更すればよいのかを理解するため40,000ドルをかけて弁護士を雇っているノースショアのホームオーナー、クイリマエステイツ、ワイキキラナイズのオーナー等にはこの提案は助けにならないでしょう。
ワイキキバニヤン、ワイキキサンセットは規制対象外ホテルとして正しく分類されるべきです。なぜならば、単にこれらの建物はそれに該当し、一方クイリマエステイト、ワイキキラナイズはこの枠に値しません。-しかし、何が正しいのか誰にわかるのでしょうか?