オアフ島の一軒家やコンドミニアムを長期(一賃貸あたり30日以上)で賃貸している方は本稿を読み飛ばしてもよいでしょう。
短期賃貸を行なっている方は読み進めてください。短期バケーションレンタルの新しい規制に関する法案89号が2019年6月25日に法制化されました。
3つの要点
1) 「バケーションレンタル事業許可証(NUC)」のない物件は「リゾート地区」以外での「短期賃貸(B&B及びTVU)」を禁止する。
言葉の定義:
「短期賃貸」とは、居住施設、一軒家、コンドミニアムにて、賃貸期間が一賃貸あたり連続して30日より短い賃貸が広告されることまたは実際に賃貸されることを指します。
「B&B」とは、オーナーがホストとして居住する物件で短期賃貸を運営する形態を指します。
「TVU」とは、オーナーが居住していない物件で短期賃貸を運営する形態を指します。
「リゾート地区」とは、ワイキキ、コオリナ、タートルベイリゾートの限られた区域に限定されています。
「NUC」のある物件一覧はこちらをご覧ください。
2) 2019年8月1日より、(実際の運営だけでなく)ただ単に非合法短期バケーションレンタルのを広告を出しただけでも違反行為となり厳しい罰金 の対象となる可能性があります。
3) 2020年10月1日より、リゾート地区外のオーナーがホストとして居住するB&Bを新たに許可しますがその数はわずか1,699件で、これには承認申請が必要となり数々の規制があります。
上記はあくまで完結にまとめた内容です。重要な追加規定は下記に項目別に記しています。また、企画・許可局のFAQはこちら、条例89号全文はこちらからを見ることができます。
新規制法の詳細を見ていく前に本法の経緯と現在の状況に至るまでを見ておきましょう。
ハワイの不動産を所有すると、占有権、管理権、排他的権利、使用権、譲渡権など一般的な権利一式が付いてきます。これにはご自身の物件の全体または一部を賃貸する権利も含まれています。
弊社はホームオーナーと不動産権利の強い味方です。資産構築や退職後に備えた投資物件の実用的なポートフォリオに加え、マイホーム所有には多大なる利益があると信じています。弊社は、ハワイ不動産の購入、売却を全力でお手伝いし、お客様がより良い決断を下すための重要な情報を提供しています。
ハワイの不動産を所有するという特別な機会には法令順守などの責務も伴います。
弊社は法律の専門家ではありません。法律をご専門とする読者の方や法解釈や責務についてご意見がある方は、コメント欄にてお知らせください。弊社は真摯に受け止め勉強させていただきます。
これまで数十年にわたり、現行の都市計画法及び短期バケーションレンタル規制法の大部分は改定されることがありませんでした。
土地利用条例にオアフ島の都市計画法が記されています。オアフ島では多くの人が「アパートメント地区」に指定されたコンドミニアム、または「居住地区(例:R-5、 R-7.5、 R-10など)」に指定された一軒家に住んでいます。
ご自身の一軒家やコンドミニアムが居住地区またはアパートメント地区の場合、30日間賃貸契約書からも分かるとおり連続して最低30日以上の契約であれば長期賃貸することができます。(但し、HOAホームオーナー組合やAOAOアパートオーナー組合による制約がある場合は除きます。)
多くの人の考えるのとは裏腹に、30日の賃貸期間のうち1週間だけ滞在し残りの3週間は宿泊客が滞在しなかったことを正当化することはできません。規則を曲げようとする人もいるでしょう。
注意:検査官または調査官からの質問に答える際には注意しましょう。このほどデイヴィッドイゲ州知事により法案807号(114決議)が法制化され、これにより「州の調査官や群の検査官に対し故意に虚偽の申告をした場合」、軽犯罪となり禁固一年または2,000ドルの罰金が科せられます。
確固たる証拠がない限り、30日だった滞在期間を宿泊客が突然短縮した、と主張する前にもう一度考えてみましょう。親戚でもない宿泊客に、「検査官には親戚だと言ってくださいね」と入れ知恵する前に考え直しましょう。
カカアコのコンドミニアムの賃貸にはさらなる制約があります。
関連記事 短期バケーションレンタルのリスクをご覧ください。
30日未満の短期賃貸が許可されるのはどんな時?
短期賃貸は下記に該当する場合のみ許可されます。
a) 「リゾート地区」に立地してる、且つ
b) ホームオーナー組合または建物の内規で短期バケーションレンタルが禁止されていない場合
企画・許可局発行-ワイキキ リゾート地区の混在マップ
「リゾート地区」以外では下記のいずれかに該当する場合のみ短期賃貸が許可されます。
c) 物件にバケーションレンタル事業許可証(NUC)がある場合。現在ある808件のNUCのうち770件はTVU(トランジットバケーションユニット)に、残りの38件はB&B(ベッド&ブレックファスト)に発行されています。(市は1990年9月に新たなNUCの発行を停止しています。)
d) コンドミニアムの建物でホテル運営が稼働しており、物件が1990年から企画・許可局が管理する非公式リストでNUC保有を免除されている場合。
弊社では、この免除リストの内容を確認しホテルコンド/短期バケーションレンタル用コンドミニアムガイドに掲載しています。
本稿冒頭でまとめた条例案89号の3つの要点を見直すと2番目と3番目だけが新たに加わったものであることにお気づきでしょう。
1番目は数十年にわたり明確に存在していたルールであるにも関わらず、経験豊富な不動産の専門家ですら理解と順守に苦しんでいるようです。なぜでしょうか?
過去30年間に何が変わったのか?
今年ハワイには1,000万人の観光客が訪れました。2018年初めには、ハワイ州全土でなんと23,000件ものバケーションレンタルの広告が出されました。これは2年前と比較して35パーセントも増加しています。
オアフ島では8,000件の非合法短期バケーションレンタルが存在する推定されています。オアフ島ノースショアの一軒家のうち25パーセントが非合法短期バケーションレンタルを行ってきました。
物件所有者が規則を知らないか、規則を知っていて守っていないかのいずれかです。
どうしてこのようなことになったのでしょうか?
非合法バケーションレンタルが急速に蔓延した理由
経済的メリット。ハワイの観光産業は好景気です。果てしなく続く需要が、長期賃貸よりも短期賃貸の収入効率が良いという考えにつながります。合法短期バケーションレンタル(ホテルコンドやB&B)は即座に購入できますが、数に限りがありリゾート地区に集中しています。
「エアービーアンドビー」効果。現在、我々は「シェアエコノミー」の時代を生きています。現在最も強力な仲介サイトは、家主と客が恋に落ちタンゴを踊らせることに成功していると言えるでしょう。その勝因をご紹介します。
a) 予約サイトが物件オーナーやさらには賃貸入居者にとっても大家に知られることなく一軒家、コンドミニアム、コテージ、ベッドルーム、リビングのソファをも収入源にするしきい値を下げたこと。簡単な操作、世界中に向けた効果的なマーケティング、シンプルな予約の流れ、家主にとって手間のかからず利益が保証された家賃回収。「簡単に誰でもできる!」手軽さ。最小経費で手間がかからず手早く簡単にお金が手に入ること。
b) 宿泊客の不安を軽減させたこと。家主のプロフィールは二重に検証され、好意的なレビューが冒険好きな旅行者の不安を取り除いてくれる。ウーバーやリフトと同様に、多くの消費者が便利な携帯アプリを使って次回の休暇や出張の予約することに慣れてきている。
現行の都市計画法や賃貸規定への指導力不足。企画・許可局指導課では近隣からの苦情が出た際にしか違反調査を行っていません。しかも、下記に挙げる二点の理由により渋々行っている状況です。
a) 立証責任が指導課にある。現行法では、違反行為を立証することがほぼ不可能。賃貸広告では違反行為におよぶ意思があったことを示すだけで証拠としては不十分。
b) 企画・許可局指導課と州税務局との間にある潜在的な利害の対立。市企画・許可局指導課は「法の執行」がその役務で、一方の州税務局は企画・許可局に引っ込んでいてもらいたいと考えている。州としては歳入が必要で、合法化か否かに関わらず積極的に税金を徴収している。
権利意識-現行法への指導力不足が「ここは私の土地。長年にこの方法でやってきたし、常に税金も納めている。政府はよくも法を改正し、とやかく言えたものだ。」という権利意識を生んでいます。経験豊富な不動産の専門家ですら、顧客に対し疑問の余地があるアドバイスをする一方で長年存在する現行法の妥当性を疑うような法改正に困惑を隠せずにいます。
このようにして非合法バケーションレンタルが前代未聞の数に至るジレンマに陥ったのです。
私利私欲により地域の品位と居住地区の生活の質を下げることとなった典型的な「コモンズの悲劇」なのです。
時代遅れの法律を改定する時期?
今日の世の中は30年前とは違います。エアービーアンドビー、エクスペディア、VRBO、ホームアウェイなどが存在します。管理指導を容易にし、短期バケーションレンタルの数を慎重に拡大するための新しい規制法では、州政府がコンプライアンス向上と税収増を両立することができるようになります。
二つの意見をめぐって白熱した議論が広がっています。
短期バケーションレンタル支持者の意見は、州や群が観光客の多様化を受け入れ、他の選択肢も合法化すべき。経済発展、税収アップの可能性もある。短期バケーションレンタルの規制は多額の歳入減と雇用の喪失の危険がある。
不安を抱く住民の意見は、非合法バケーションレンタルにより地域の性質が壊され、早急に求められる住宅供給が減少し、地元の人の住宅事情がより困難になってしまった。従来のリゾートホテル産業が雇用喪失に苦しむこととなった。
2018年3月には、ハワイアップルシード法律経済公正センター(Hawaii Appleseed, the center for law & economic justice)が、バケーションレンタルが住宅及びハワイ経済に与える影響をまとめた報告書を発行しました。
短期バケーションレンタル規制の改定が大幅に遅れていたことを多くの方が認めるでしょう。
2019年版新規制法の詳細
以下に追加規定をご紹介します。
1) 2020年10月から、リゾート地区外で1,699件を上限にB&B(オーナーがホストとして居住する短期賃貸施設)が新たに認められます。これには許可申請手続きとその後毎年の更新手続きが必要です。
2) 申請には初期申請料1,000ドルが必要です。更新は毎年8月30日までに行うこととなっており2,000ドルの更新料とGET、TATの納付証明が必要です。
3) 承認されたB&B 許可証は譲渡が認められず、土地とともに引き継ぐことはできません。
4) B&Bの申請には 充分な補償内容の保険に加入している証明、ホームオーナ協会がある場合は協会の承認、いかなる条件、協定、制約、規約、内規を順守していることが必要です。夜10時から8時までは静かにしなければなりません。苦情を受け付ける電話番号には24時間対応しなければならず、この番号はB&B から250フィート以内に住むすべての住人に提供しなければなりません。
5) B&Bは相互1,000フィート以内に設置することはできません。(但し、NUCを持つ既存のB&Bまたはリゾート地区内は除く)また、地域ごとにB&Bの数に上限が定められており、その数は下記のマップのとおりです。
6) B&Bとして利用する住宅は、家族が居住している住宅で、集団生活を行っている施設ではない住宅でなければなりません。最大4室のゲストルームのうち同時に2室までしか賃貸できません。ゲストルーム毎に表通りに面していない駐車スペース1台分を用意しなければなりません。
7) B&B を広告する看板を屋外に設置することは禁止されています。
8) B&B申請者は 個人であり、当該住宅に居住する住宅控除の対象者でなければなりません。申請者は、最低でも物件の50%を持ち分として所有していなければならず、その他のB&BやTVUを所有することはできません。
9) 2019年8月1日よりすべての短期バケーションレンタルの広告、運営は新規制法89号を順守しなければなりません。広告の事実だけでも短期バケーションレンタルが広告に記載された住所で運営されているという十分な証拠になります。立証責任はオーナー側にあります。
10) 短期バケーションレンタルの広告には最新の登録番号またはNUC番号、及び住所を記載しなければなりません。
11) 違反行為が特定の期日までに改善されなかった場合、1,000ドル以下の罰金が科せられることがあります。違反行為が続く場合、一日につき5,000ドルの罰金が科せられることがあります。違反が繰り返される場合、一日につき最高10,000ドルとさらに処罰の対象となる非合法賃貸活動で得た収益全額の罰金が科せられることがあります。
12) リゾート地区以外では、下記の二つの条件を満たす場合にA-1 低密度アパートメント区域とA-2中密度アパートメント区域でB&B及びTVUの運営が認められています。
隣接する50エイカー以上のリゾート地区から3,500フィート以内にあること。
リゾート建設の基本計画の一環で計画に変更が生じた場合、これに準じて再区分されたリゾートディストリクト、A-1またはA-2であること。
注意:ワイキキは基本計画により建設されたリゾート地区ではなくA-1またはA-2区域が存在しません。しかし、コオリナの基本計画地区には条件、協定、制約、宣言書、規約、内規で制限がない限り追加規定が適応される場合があります。確信が持てない場合は、常に企画・許可局(電話:768-8000)に連絡し、ご自身のコンドミニアムに関する書類を確認しましょう。
13) 2020年10月1日より、仲介サイトは企画・許可局に掲載するすべてのB&B及びTVUの下記の項目を月間報告することになります。
各掲載の責任者氏名
各掲載物件の住所
B&B、TVUオーナーまたは運営管理者のTAT識別番号
掲載物件の滞在期間
各滞在の支払価格
注意:この報告義務に関しては仲介サイト側からの反発が予想されます。動向に注目していきましょう。エアービーアンドビーは過去に同様の情報提供に関して裁判所に召喚されたことがありますが、今のところ決定は覆っていません。
別の法案85号はカークコールドウェル市長が拒否権を行使し、ハワイ州レベルの法案で「エアービーアンドビー法案」とも呼ばれるSB 1292号はデイヴィッドイゲ州知事により拒否され、いずれも法制化されませんでした。
オアフ島以外のネイバーアイランドではそれぞれの行政区で短期バケーションレンタルの新たな規制が施行されています。
まとめ
新規制法ではこれまで禁止されていなかったことを新たに規制する内容はほとんどありません。大きな変更点は規制法の管理指導方が容易になったことです。多くの短期バケーションレンタル住宅やコンドミニアムが罰金の対象となる可能性があります。ワイキキのアパートメント地区にある数百件のコンドミニアムがオーナーも気づかないうちに違法短期賃貸経営となる可能性があります。
ワイキキバニヤンコンドの876ユニットのうちわずか200ユニット程度しかNUCを持っていません。435ユニットあるワイキキサンセットコンドには250ユニットしかNUCがありません。NUCを持たないその他のユニットは短期賃貸ができないということです。
ワイキキスカイタワーやワイキキラナイズでは短期賃貸が許可されていないにも関わらず、偽情報によりワイキキラナイズのコンドミニアムの三分の一が何年もの間短期賃貸を行っています。知識不足がトラブルとなるかもしれません。事情通になりましょう。
いずれにせよ弊社では賃貸収入に対して適切な納税をすることも含め、法律に従うことをお勧めしています。
弊社は、今回の新規制法により予想される経済的な影響をハワイの経済が乗り越えられると見ています。2015年にカリフォルニア州のサンタモニカで同様の法律が施行されました。短期バケーションレンタルから30日賃貸に切り替えたオーナーもいたことでしょう。
合法短期賃貸(ホテルコンド)やNUCのあるコンドミニアムが利益を生むのは間違いありません。投資家にとってはイリカイ、イリカイマリーンなどその他の短期賃貸物件が理想的な投資物件となるでしょう。