ハワイの不動産を購入する(オファーを入れる)際、14ページにわたる売買契約書(Purchase Contract)を使用します。
※契約書原本をご覧になりたい方は、Yoshiko@HawaiiLiving.comまでご連絡ください(法律上、原本へのリンクや原本のコピーをウェブ上に掲載できないため)。
契約書には、ある一定の期間であれば、バイヤーが支払った手付金の全額払戻を受け、契約を解除することができる様々なコンティンジェンシーが含まれています。
コンティンジェンシーとは、契約を進める上で「満たされるべき条件」(例:物件検査レポートに対するバイヤーの承認)や「果たされるべき事項」(例:定められた期日までにバイヤーはシロアリ検査の結果を受け取る)のことです。コンティンジェンシーは、契約書に明記されたコンティンジェンシー期間内にバイヤーが契約解除しない場合はその権利の放棄とみなされます。
売買契約書には空白欄があり、バイヤーが各コンティンジェンシー完了期限を記入するようになっています。つまり、コンティンジェンシー期間は決められた期間があるのではなく交渉の余地があるということです。本稿では適切なコンティンジェンシー期間についてもご紹介します。
購入契約書に説明されるバイヤーのコンティンジェンシーは、「バイヤーの管理下にあるコンティンジェンシー」と「バイヤーの管理下にないコンティンジェンシー」に分けられます。
バイヤーの管理下にあるコンティンジェンシー
バイヤーの管理下のコンティンジェンシーは、明記されたコンティンジェンシー期間内であればバイヤーが検討、承認することができる対象にあります。売買契約書内に明記された一定期間内であれば、これらコンティンジェンシーに基づいて何ら制約なしに契約書を解除することができます。
物件検査(ホームインスペクション)(J-1): コンドミニアム及び一軒家に適用され、最も多い契約解除の要因です。
一般的に、バイヤーとセラーが契約書に署名した時点から起算して7日から14日のコンティンジェンシー期間が設けられます。通常、バイヤーはエスクロー期間の早い段階で不動産検査の専門家に検査を依頼します。この費用はバイヤーが負担します。平均的な検査費用は2ベッドルーム、2バスルームの物件で400ドル程度です。但し、各検査員が独自の価格設定で行っています。
検査で問題が発覚した場合、バイヤーはセラーと交渉しクレジットを請求するか問題点の修繕、改善を要求することができます。しかし、セラーはバイヤーの要求に応じる義務があるわけではありません。検査結果報告で問題が見られなかったとしても、バイヤーにはコンティンジェンシー(J-1)に基づいて購入契約を解除する権利があります。契約書には「バイヤーが検査内容に同意しない場合・・・」と書かれているだけで、検査結果報告に何が書かれていようとその内容に不同意することができます。
セラーによる情報公開書(I-1)とバイヤーの権利(I-4):コンドミニアム及び一軒家に適用されます。
一般的に、5ページにわたる物件情報開示書をセラーがバイヤーに提出するまでに7~10日の猶予があります。物件情報開示書はこちらをご覧ください。これはセラーにより作成されます。
物件情報開示書は約100問の質問からなり、セラーが「Yes」、「No」、「NTMK(not to my knowledge)」(私の知る限りでは、ない)、「NA(not applicable)」(当てはまらない)のチェックボックスに回答する形式になっています。「Yes」と回答した項目にはその理由を説明することになっています。項目には次のようなものがあります。「該当物件に関する権利紛争がありますか?」「短期賃貸の許可はありますか?」「特別賦課金がありますか?」「建築許可のない建物がありますか?」「欠陥、修繕、交換があればリストにチェックしてください。」「シロアリ被害の兆候はありますか?」
一般的に、バイヤーはセラーの情報公開書を受け取ってから7~12日であれば購入契約を解除する権利があります。I-4には、「情報公開書を受領した際・・・バイヤーが購入契約を解除する場合は・・・X日以内に情報公開書を精査しなければならない。」とあります。
コンドミニアム・ドキュメント(M-1):コンドミニアム及び一部の一軒家(組合がある場合)に適用されます。
コンドミニアム・ドキュメントはセラーの費用負担において(一般的に約400ドル)発注されます。エスクロー期間が始まってすぐに発注されるのが理想的で、発注から受け取りまで通常5~10営業日かかります。
コンドミニアムの場合、コンドミニアム・ドキュメントには宣言書、規約、内規、資産報告書、保険の概要、理事会議事録、プロジェクト情報用紙(特別賦課金や紛争がある場合に管理運営代理人により作成されるもの)が含まれています。
コンドミニアム・ドキュメントを受領した際には、一般的にバイヤーは7~12日以内に購入契約を解除する権利があります。M-1の最終段落には、「ドキュメントに含まれる情報に基づきバイヤーがドキュメントを受領してからX日以内に物件を受け入れない場合、バイヤーは購入契約解除を選択することができ、・・・」とあります。
権原報告書(G-2):コンドミニアム及び一軒家に適用されます。
エスクロー会社は、当該物件のローン残高および抵当権を説明する
事前権原報告書を受領した際には、一般的にバイヤーは5~7日以内であれば契約を解除する権利があります。G-2(a)には「バイヤーが事前権原報告書に納得しない場合、事前権原報告書を受け取ってからX日以内に購入契約を解除することができ、・・・」とあります。
事前権原報告書に何ら問題がない場合、バイヤーが事前権原報告書に基づき購入契約を解除することはまれです。
インベントリーリスト(E-3):家具・家電等付きの物件のみに適用します。
一般的に、セラーがバイヤーに売却に含まれる家具やその他の物品を一覧にしたインベントリーリストを提出するまでに3~7日以内の猶予があります。インベントリーリストを受領した際には、一般的にバイヤーは1~5日以内に購入契約を解除する権利があります。E-3の最後の段落には、「バイヤーがインベントリーリストに納得しない場合、インベントリーリストを受領してからX日以内であればバイヤーは購入契約解除を選択することができ、・・・」とあります。
インベントリーリストに基づき購入契約を解除することはまれです。
レンタルドキュメント(N-1):セラーが不動産管理会社との賃貸契約を結んでいる物件、現在入居者がいる物件、入居の予約が入っている物件に適用されます。
一般的に、セラーがバイヤーにレンタルに関するドキュメントを提出するまでに3~7日の猶予があります。レンタルドキュメントを受領した際には、一般的にバイヤーは5~7日以内であれば購入契約を解除する権利があります。N-1では「ドキュメントに含まれる情報に基づき、バイヤーが当該ドキュメントを受領してからX日以内に物件を受け入れいない場合、バイヤーは契約解除を選択することができ・・・」とあります。
バイヤーがレンタルドキュメントに基づき購入契約を解除することはまれです。しかし時折、セラーが契約する不動産管理会社との契約期間をバイヤーが引き継ぐことがあります。必ずしもバイヤーにとって喜ばしいことではありません。
バイヤーの管理下にないコンティンジェンシー
バイヤーの管理下にないコンティンジェンシーとは、取引期間中に行われるその他の出来事または行われるべき出来事が行われない場合が対象となります。つまり、何らかの出来事が起きた場合または起こるべき出来事が起こらなかった場合に限り、バイヤーはコンティンジェンシーに基づいて契約を解除する権利がある、ということです。
融資(H-3):購入にあたり融資を受けようとするバイヤーに適用されます。
H-4(c)に記載された期日までにコンディショナルローンコミットメントレターを入手できない場合、バイヤーはH-4(c)に記載された日付より前であれば購入契約を取り消すことができます。
バイヤーがローンコミットメントレターにある条件を満たしたにも関わらず融資機関がクロージングまでに融資できない場合、バイヤーはO-3に従って購入契約の解除を選択することができます。O-3は、期日後であっても当事者(この場合はバイヤー)が購入契約をキャンセルする権利を与える条項です。一般的にO-3では、購入契約のキャンセルにコンティンジェンシーの期日を超えて1~7日の猶予を与えています。
シロアリ検査(L-2、L-3):コンドミニアム及び一軒家に適用します。
バイヤーがシロアリ検査業者を選定し、セラーがその費用を負担します。シロアリ検査専門業者の費用は、2ベッドルーム、2バスルームの物件で約350ドルですが各業者がそれぞれ独自の価格で行っています。
シロアリ検査で侵入が確認された場合は、推奨される処置をセラーが手配、費用負担し、クロージング予定日の5日前までに完了証明をバイヤーに提出します。これに従わない場合はO-3に基づきバイヤーは契約をキャンセルすることができます。
シロアリ発生による明らかな損傷の報告がみとめられ、物件の価値に直接、大幅な悪影響を与える場合、セラーは「後日発見される情報」に関連する条項I-2に基づき、情報を開示しなければなりません。シロアリがいつの時点で物件価値に大幅な影響を与えるようになったのか、がバイヤーとセラーの間で争うポイントとなります。
測量調査(K-2):一軒家に適用します。
セラーはハワイ州の資格を持った測量士を手配しなければなりません。測量士の調査費用は約850ドルですが測量士それぞれが独自の価格で行っています。
測量士は調査物件の境界点を明らかにし、物件の境界線およびその周辺に建つ建造物を示す地図を作成します。
測量の目的は、越境がないかを明らかにすることです。ハワイ州では、6インチより大きく隣の家の土地に侵入していると越境とみなされます。(多くの場合、壁が超えてしまっています。)6インチまたはそれ以下の侵入は僅少(わずかな侵入で特に処置の必要なし)とみなされます。
越境が確認された場合(セラーの境界壁が隣に越境しているまたはその逆)、バイヤーは現状有姿を受け入れるか、セラーに対して越境物の撤去(境界壁越境の場合は不可な場合がある)または越境に関する隣人との同意書作成を指示することができます。セラーがこれに従わない場合やクロージングのX日前までにバイヤーの要求を完工できない場合、バイヤーはO-3に従って、契約の解除を選択することができます。
後日発見される情報(I-2、I-4、I-5):コンドミニアム及び一軒家に適用します。
情報開示書に記されていない「物件の価値に直接、大幅な悪影響を与える」欠陥をセラーが後日発見した場合、発見からX日以内に修正した情報開示書をバイヤーに提出しなければなりません。ただし、提出期限は登記日よりも前の最終営業日の正午です。
バイヤーが、「物件の価値に直接、大幅な悪影響を与える」欠陥を発見した場合も「後日発見される情報」とみなされます。
バイヤーは、セラーから修正した情報開示書を受領した日、または欠陥発見日から契約のキャンセルまでX日の猶予があります。
おわりに
本稿では、ハワイ州でのセラーとの契約において、コンティンジェンシーがどのようにあなたを守ってくれるのかを説明しました。
それぞれの取引は一つ一つ異なり、上記の説明されていること超えて解釈、考慮しなければならない微妙な差異が数多くあることも覚えておきましょう。
免責事項:ここにある情報は、あくまで一般的な情報であり、いかなる決断においてもこれに依存するべきではありません。常にご自身の弁護士にご相談ください。