好みの物件を見つけたら、その物件に対してオファーすることが必要ですが、どのようにオファーしたら良いかご存知ですか?買い手はしばしば「定価、もしくはそれ以上の価格でオファーすべきなのか?それとも定価以下でもオファーできるのか?」と悩まれます。
結論から言えば、物件に対していくらでオファーを出すかは完全に買い手次第です。ですので、不動産業者はいくらでオファーを出すべきかお伝えすることはできません。しかしながら、不動産業者は買い手がオファー価格を決めるプロセスをサポートすることは可能です。最適なオファー価格の設定を考える前に、まずは検討する金額の範囲を決めましょう。
上限価格
買い手が支払うことが可能な金額であり、それ以上でもそれ以下でもありません。実際、自身の本当の購入能力を鑑みることなく、自分たちなら十分買えると思いこまれて、物件を買おうか検討している買い手に私は何人も会っています。実は不動産業者ですらしばしば買い手の購入上限を過剰に見積もりしがちです。
まず、あなたが懇意にしている有資格の住宅ローン専門化による事前承認を得て、家を探す前に、自分が購入できる最高価格帯を明らかにしておきましょう。自分の予算額を10%も上回る物件を気にいってしまうことはあまり現実的ではありません。
下限価格
その住宅を得ることができる可能性がそれなりにあると考えられる金額のオファーになります。すべての買い手の方が私に「私たちはお買い得価格のものだけを探しているんだ。」と仰いますが、ちょうどそのような価格のことです。完全に理にかなっていますよね。実際のところ、条件の悪い価格の物件を探しているんだ、という買い手の方には私は一度もお会いしたことがありません。では、お買い得価格と条件の悪い価格を区別してみましょう。
リスト価格に関連する、オアフ島のすべての住宅とコンドミニアムの平均販売価格は96%から99%の間で変動しています。もちろん、だからといってリスト価格の20%オフで販売されている物件が全くない、という意味ではありません。しかし、そのようなケースは通常の正規分布上におけるロングテール上の稀な外れ値であるといえます。すなわちめったにあり得ないということです。
それを証明するように、オアフ島の大部分の住宅とコンドミニアムはリスト価格の90%から100%の間で販売されています。いくつかはリスト価格以上で販売され、いくつかはリスト価格の90%以下で販売されています。
ですので、ホノルルの物件を驚くようなお値打ち価格で手に入れることを夢見ている方は、「最速でお金持ちになれる!」といった商材を売ろうとしている深夜番組の怪しいテレビショッピングチャンネルや、差し押さえ物件の逸話に騙されているかもしれません。
上記のような内容は、可用性バイアスであり、あなたの現実的可能性のある結果に対する客観的な考え方を歪めるものです。わかりやすく例を挙げて言えば、ジャックポットを当てることや、宝くじに当選することは確かにあり得ますが、非常に稀なケースですので、定年後の資金計画としてこれら2つのようなものに頼ることは賢い戦略とは言えないでしょう。これと同じことです。
オアフ島の不動産に関していえば、リスト価格の25%以下でのオファーはカウンターオファーすらもらえないというのが現実です。提示価格が売り手のモチベーションを上げるような価格でしたら、売り手は提示価格に近い価格まで値下げすることが考えられ、取引成立の可能性を高められます。
実際のところ、買い手がどのようなオファーをするかに関係なく、市場は自動的にそのオファーが現実的なものか否か明らかにします。しかし、やみくもに試行錯誤するのとは違い、より良いアプローチにはいくつかの戦略的な計画が含まれているものです。
では、不動産売買における成功の可能性を上げる戦略を練るとき、実践的かつ有用な要因とは何でしょうか?
有効なオファー戦略を練るときに考えるべき4つの要因
以下で述べる、最初の2つの要因が不動産の正規市場価値をつくります。これは、お買い得価格と条件の悪い価格の間の閾値を特定するのに役立つ歴史的なベンチマークです。不動産業者は以下を提供し、話し合う必要があります。
1) 近隣類似物件の比較―直近の記録 – 比較可能なセールス
直近すべての近隣類似物件を比較分析すると、購入意欲意欲、購入能力ともにある買い手が直近で比較対象となりうる不動産に支払った金額がわかります。これにより、最新かつ本当の市場価値が確立されます。
2) 需要と供給 – 現在入手可能な在庫と市場速度
現在入手可能な比較対象となりうる不動産を確認することは、現時点での真の市場価値を確立することができます。需給バランスの変化は、市場の速度を変え、将来価値に影響を与える可能性があります。なのでここでは、差し迫った価格変動が起こりうる市場の速度を分析するための2つの指標を以下に示します。
・在庫供給月数(MSI: Months Supply of Inventory )
過去12か月間中の最近の不動産販売の速度を元にして、現在のすべてのリスティング物件が売れるのに何か月かかるかを表している指標。
例:直近の過去12か月間で18件の住宅が売れており、現在4件の住宅がリスティングされているとき、以下のようにMSIは求められます。
18件÷12か月=1.5件/月
1.5件/月×4件=6MSI
市場はMSIが4~6のとき適正だと考えられます。MSIが4以下のときは価格が上昇する急速に変化する売り手市場を表します。MSIが6以上のときは価格が落ち着いた、速度が遅い、買い手市場であることを表します。
・市場日数(DOM)
–物件が売りに出されてからオファーが受け入れられるまでの日数の中央値。
これら上記の要因は、特定の価格で住宅を購入できる確率がどれだけであるかを表す理論的な指標にすぎません。現実世界は理論通りではなく不確定なものです。
「宇宙には、私たちにとって意味のある義務はありません。また、私たちが定義したとおりのものにする義務もありません。」
天体物理学者のニール・ドグラース・タイソンが述べた通りなのです。
市場に慈悲はありません。あなたが数字に囚われ過剰に分析している一方で、他の買い手がオファーを提示しあなたの夢のマイホームをかすめ取ってしまうかもしれません。あなたが決定的な行動を起こさない限り、理論数値に固執することは、たわごとに過ぎないのです。
関連記事:ハワイの不動産購入の心理学とあなたの行動を阻む3つの「P」
上記の2要因を踏まえた上で、オファー戦略を決定するための4つの要素のうちの残りの2つの要素がもたらされます。
3) 売り手の販売意欲
売り手の販売意欲は時間とともに変化します。時間がすべてなのです。
不動産業者は、いくつかの推測スキルを使用して、なぜ売り手はその不動産を売りたいのか、また売り手はどのくらい柔軟に対応してくれるか、可能な限り見つけ出す必要があります。
「これまでに何件のオファーを受けましたか?提示価格のオファーまたはそれに近い価格のオファーを受け取りましたか?売り手が今までのオファーを受け入れなかったのはなぜですか?売り手が拒否したオファーの中で最高額のオファーは何でしたか?バイヤーが申し出をするかどうかを知るために重要なことは他にありますか?」
このように的を得た質問をすると、しばしばリスティングエージェントはうっかり本当のところを口にしてしまい、予期していなかった有力情報を手に入れることができます!
レベルの高いコミュニケーションは、売り手側にとっては皮肉なことに、買い手にとって有益な秘密情報を明らかにすることもあるのです。
4) 買い手の購買意欲
「この物件はどれくらい好きですか?プロパティはあなたのニーズを満たし、最近見た他のどのプロパティよりも密接に望んでいますか?他の誰かがそれを買うことになったら失望しますか?購入する理想的な期間は何ですか?次の近接試合が利用可能になるまで、どれくらいの時間、喜んで待つことができますか?」
これらの質問に答えることができるのはあなただけです。もちろん入手可能な物件があと最後の一軒、という状態になることはありません。しかし、ハワイは在庫が限られている有限の不動産市場です。理想的な住宅はいつも待っていてはくれないのです。
オファー戦略
上記4つの要因はいずれも短期間で変わる可能性があります。なのでタイミングがすべてなのです。たった1つのリストやクローズドセールが市場のダイナミクスを変えるのです。 2人の買い手が同じプロパティに同時に興味がある場合、またはプロパティが数週間以上オファーを受け取らない場合は状況が異なります。
全ての買い手は、売り手が提示価格より安く売ってくれることを望んでいます。買い手がいくらディスカウントを得ることができるかは上記4つの要因の均衡がどう変化するかによります。
以下の3つは、オファー価格を考えるうえで基本的なアプローチになります。
戦略1:積極的な挑戦 – 最高のオファーを出す
もし、ある不動産がまさに自分の求めていたもの、つまりその不動産が本当に手に入れたいと思っているもので、もし誰かに買われたら非常に悔しい思いをするものだと思ったときは、これが1番の戦略です。積極的な挑戦とは、同じ物件に対して他の購入希望者がいるとき、定価に近い価格、もしくは定価以上の価格でオファーすることを意味します。ちょうど不動産が手に入るか失うか瀬戸際のラインです。なので、資産証明書もしくは銀行からの事前承諾書をオファーと一緒に提出するとよいでしょう。
不動産業者は、他の競合するオファーよりもあなたのオファーに優位性を与える方法についてアドバイスします。テクニックに頼りすぎることなく、あなたのオファーがより魅力的になるように追加条項やその他の特定の条項を用います。パートナーとなり最良の結果を尽くすのです。
戦略2:表示価格より低い価格でオファーを出す – そして売り手の反応をみる
この戦略は、該当不動産が自身の最も求めている不動産ではなく、他に買い手がいないときに取られる手法です。つまり、その不動産は気に入ってはいるが誰かに買われても惜しくはないときに有効です。
このとき、売り手は3つの選択肢があります。1)オファーを受け入れる2)オファーに対してカウンターオファーもしくは3)拒否する、という選択肢です。もしオファー額があまりにも低いと売り手はまず返信してこないでしょう。つまりオファーは拒否されたということと同じです。その時はもう少し価格を上げて再度オファーを出し、売り手がどのような反応をしてくるか見るのが良いでしょう。
戦略3:馬の前に人参をぶら下げる
少しユーモラスな表現をしておりますが、もう1つ戦略があります。ちょうど戦略1と2の中間の価格でのオファーをすることです。
例えば、買い手は$809kである不動産をリストにしています。比較対象の販売価格と最近の市場ダイナミクスは、その不動産の市場価値は$800kであると示しています。この市場価値は、オファーが明確に書面で出され、クロージングの日が近いときに、売り手が販売を考慮するだろう最低価格に近い価格を表しています。なのでこの場合、オファー価格は$797,200あたりだと推測されます。売り手にとっては期待していた価格よりは安いですが、比較的優良なオファーであり、オファーを受け入れてもよいと思える十分良い価格でしょう。この戦略は、他に購入希望者がいないときに有効的です。
プレゼンとコミュニケーションの質による取引の成立
夢のマイホームを無事に手に入れるには、いくらでオファーを出すか以外にもやらねばいけないことがまだあります。売り手はオファー価格をただ見ているだけではありません。
売り手があなたのオファーを喜んで受けいれるかは、あなたの担当の不動産仲介業者が、あなたのオファーをリスティングエージェントへどのようにプレゼンするかにかかってきます。しかしながら、多くの人は卓越したコミュニケーション能力と堅実な交渉能力のもつ効果をしばしば軽くとらえがちです。
実際、私のリスト物件に対して、現物も見ていない状態かつ買い手側のエージェントからお電話も頂いていない段階でオファーが届くことがたまにありますが、このような非常に残念なオファーに対して売り手側はどのくらい前向きに販売することを検討していると思いますか?
不動産を購入する際は、自分こそがその不動産を購入するにふさわしい買い手であると売り手を納得させねばなりません。多くの売り手にとって、確実にクローズできること、迅速なクローズができること、互いに柔軟に協力し合えることは、最終販売価格と同じくらい重要なことです。
オファー額がいくらであるかは買い手が購入をキャンセルしたときには何の意味もありません。買い手が実際の物件を見たうえで買うか買わないか決心するまでずっと買い手がその不動産をキープすることは、大部分で勝率50/50のギャンブルをするのと同じで、時間の無駄です。
なのでオファーを出す前に自身の目で物件を確認するほうがずっと望ましいです。述べたように、オファーを出す前にリスティングエージェントに連絡をとることはいくつかの購入までのプロセス上で意味があるものです。
買い手側クライアントがオファーを出すときに役立つかもしれない売り手にとって重要なものは他に何があるか?
潤沢な資金があることの証明や事前承諾書がオファーに付随し提出されると、非常に良く準備されている誠実なオファーだと捉えられ、クロージングの確実性を上げることができます。さらに、あなたの担当の不動産仲介業者が卓越したコミュニケーション能力と交渉力を駆使したカバーレターを添えることで、よりクロージングの確実性を上げることができます。
また、「たった今、非常に良いオファーを送らせていただきました。この買い手の方は経済力に優れておりますので、現段階で当該物件にいくつオファーがあろうともこの方以上の買い手はおりません。」というように、オファー提出後に、売り手に対してあなたの担当の不動産仲介業者がフォローアップの電話を差し上げることで、他のオファーに埋もれてこちらのオファーが見落とされることを防ぐのを防ぎます。
適切な考え方と交渉ツールを用いることをこの記事では一貫して述べてきました。あなたの不動産仲介業者はあらゆるニュアンスでアプローチすることにより、あなたのオファーを他のオファーから一線を画すようにポジショニングします。
ご紹介した戦略の中でどれがご自身にとってしっくりくるかはご自身で決めていただくものです。私たちは、プロフェッショナルな不動産専門家として、皆様の契約成立を手堅いものにできるよう、誇りをもってお手伝いしております。