短期バケーションレンタルのリスク

シェアリングエコノミー時代の幕開け以来、短期バケーションレンタルがブームとなっています。1995年にはVRBOが創業し、その後の不動産に対する見方を大きく変えることとなるホームアウェイ(2004年)、エアービーアンドビー(2008年)の先駆けとなります。

誰もが利益の上がる利権を手にしたいと思います。弊社でも短期バケーションレンタルとして賃貸するにあたりどの物件が適しているのか、といった問い合わせを日々受けておりその件数は増え続けています。

このような需要にお応えするため、弊社ではホノルルの短期バケーションレンタルに関する総合ガイドGuide to Honolulu Condotels and Short-term Rental Condosをまとめました。

また、販売中のホテルコンドはこちらから検索できます。

ハワイ州以外に在住のバイヤーにとっては、短期バケーションレンタル物件を所有することで二つの目的を達成することができます。二つの点で良いとこ取りができるのです。

1.    最大限の賃貸収入を得られる可能性賃貸日数30日未満の短期バケーションレンタルでは、最低30日以上の賃貸期間を定める長期の賃貸に比べてかなり多くの賃貸収入を生む可能性があります。

2.    賃貸運営の柔軟性-物件の予約状況を管理できるため、ご自身の休暇期間は貸し出し日から除外することができます。宿泊客の予約の合間にご自身が物件を利用しお楽しみいただけます。

不動産オーナーは、他のオーナーたちがいかにして不動産を金のなる木にしていったのかというサクセスストリーに触発されます。しかし、いかなるチャンスにもリスクはつきものです。

不動産ビジネスにおいては「知らぬが仏」という訳にはいきません。基本的なルールを知らないでいるとトラブルとなることもあり、あからさまにルールを無視すればさらに大変なことになり兼ねません。

ここでは気を付けなければならない三大リスクをご紹介します。

1) 違法な短期バケーションレンタル

「時速200マイルで走れるポルシェも交通ルールは守らなければならない」

ほとんどの住宅地及びコンドミニアムの建物内では短期バケーションレンタル(30日未満の賃貸)が認められていません。

こちらはワイキキの居住用コンドミニアムのロビーに貼り出された貼紙です。

最高罰金1,000ドル

短期バケーションレンタルは下記の場合のみ許可されています。

a) 建物が「ホテル・リゾート地区」に所在する場合

b) 建物の内部規定で短期バケーションレンタルが禁止されていない場合

また、下記のいずれかの条件を満たせば短期バケーションレンタルが認められる三つの例外があります。

1) コンドミニアムのユニット自体にバケーションレンタル事業許可証(NUC-Non-confirming Use Certificate)があること

2) コンドミニアムのある建物自体が稼働中のホテルであり、1990年から企画・許可局により作成された非公式文書により物件がバケーションレンタル事業許可証免除対象であると明記されていること

3) (一軒家の場合)物件に合法的な民泊許可証(B&B license)があること

市では1986年以降、バケーションレンタル事業許可証及び民泊許可証の新たな発行を行っていません。現存するバケーションレンタル事業許可証は2年に一度の更新手続きが必要です。バケーションレンタル許可証の一覧はこちらからご覧になれます。バケーションレンタル事業許可証免除対象建物の一覧は弊社のブログ記事Condotel Guideに掲載しています。

内容に関しては意見の相違や資格問題がありますが、ここに記すのは基本的な事柄です。

ワイキキラナイズ

ワイキキで人気のコンドミニアムワイキキラナイズの場合を見てみましょう。

  • 建物は短期バケーションレンタルが禁止されているアパートメント区域に建っています。
  • 一方、1987年のワイキキラナイズのコンドミニアムデクラレーションの原本にはでは、「当該アパートメントのオーナーはアパートメントに居住する、またはホテルとしての使用を含む居住用コンドミニアムとして合法的に賃貸する当然の権利がある」と記されています。規定には、「プロジェクトのアパートメントはプロジェクトの規制区分と一致するいかなる合法的な目的にでも使用することができる」と明言されています。

「合法的な使用」、「規制区分と一致する」と明確に記されています。

内部の情報筋によると、ワイキキラナイズで起きた事柄は時系列順に下記のとおりです。

「ある住人が理事会に対し短期バケーションレンタルは認められていない旨の進言を行う。

理事会は短期バケーションレンタルが認められないことを裏付ける文書の発行を企画・許可局に依頼し、その後文書が届く。

ワイキキラナイズのオーナーに同文書のコピーが送付される。

理事会が規定の施行を開始、企画・許可局が定期巡回を行い召喚状の発行を始める。

理事会は訴訟の脅威となる事案を2件受け取り、うち1件が調停となる。

理事会の行う措置は調停終了まで一時停止となる。調停は不成立に終わる。

本稿寄稿時点では、未だ複数の物件が賃貸広告を掲載しており、バケーションレンタル反対派のオーナー等は過半数の理事の賛同を求め活動している。

訴訟の脅威が示されたことにより理事長、副理事長、理事会弁護士を含む理事等が辞任している。」

2017年11月9日企画・許可局発行文書1 
2017年11月9日企画・許可局発行文書2 

仮にワイキキラナイズの物件を購入していたら、他のオーナーもやっているから短期バケーションレンタルは認められていると思い込み、誤解の上で物件を購入していたかもしれません。周りが法定速度を超えて運転しているからといって、ご自身がスピード違反で検挙されないという訳ではありません。確固たる情報源に確認しよく理解することが賢明です。

建物の内規より市が定める地域制の方が優先される、しかしその逆はあり得ない、ということを考えたことがありますか?コカ・コーラゼロを飲んでも食べてしまったドーナツのカロリーを帳消しにしてくれる訳ではないですよね。

もちろん考え方の違いもあり、弁護士が抜け道や議論のために判例を見つけてきたりするでしょう。

われわれは弁護士ではありませんし、論争中の問題についてどちらの味方をするわけでもありません。しかし、お客様の不動産購入の一助となるよう卓越した不動産情報の提供に努めています。

法律に関しては常に資格を持った専門家に相談しましょう。

ちなみに弊社では当初よりワイキキラナイズでの短期バケーションレンタルは認められていないとお客様にご案内しています。理事会がかつてはあからさまに短期バケーションレンタルを認め積極的に関与してそれが明るみに出なかったため我々も長年にわたりどうしたものか思案してきました。個人的に前理事との話した際には短期バケーションレンタルを全く否定していなかったことを思い出します。

ワイキキには同様の状態に陥っている建物が他にもいくつかあります!

本稿寄稿時点ではワイキキラナイズの理事会は真実を認識してか都市計画法に従っていますが、これにより数名のオーナーの怒りをかってしまっています。

しかし最近の報道によると、企画・許可局コンプライアンス室が「これ以上理事会に代わって取り締まる役割を請け負いたくない」という姿勢を見せています。市の指導不足が違法短期バケーションレンタルを行うオーナー達の抱く権利に対する誤った意識を助長しているのでしょうか?

この問題の難点は、企画・許可局指導部と州税務局の潜在的な対立にあるとも言えます。市の企画・許可局指導部は「法律を執行する」べき立場であり、一方の州税務局は企画・許可局コンプライアンス室が手を引いてくれればいいと思っています。つまり、州は歳入が必要であり、その短期バケーションレンタルが違法か否かに関わらず積極的に税収を追及しているのです。

ワイキキラナイズのオーナー等、理事会、政府が関わるこの問題の解決は法律の専門家に任せるとして、結果がるまでは冷静に見守り、バイヤーは注視しておきましょう

カカアコのコンドミニアム

カカアコ地区で短期バケーションレンタルを検討中の方は、今一度しっかりと考えてみましょう。カカアコのコンドミニアムは、賃貸期間を最低180日と定めたハワイコミュニティディベロップメントオーソリティルールズの影響下にあります。関連記事Kakaako Rental Rulesをご覧ください。

物件を購入する前にリスクにも意識を向けてみましょう。

カカアコのコンドミニアム群

2) マーケットの独特な変動

「短期バケーションレンタルでの収入の可能性は観光産業の景気次第」

前述のとおり、短期バケーションレンタルは長期賃貸の収入に比べてかなり大きな可能性を秘めています。だたし、観光産業が好調であればという条件付きです。過去の実績は未来の結果を保証するわけではありません。

めったにないような予期せぬ事態が起き劇的に収入減となることもあるかもしれません。予期せぬ事態は、地政学、異常気象、テロ、感染症の脅威が要因となるかもしれませんし、観光産業の良し悪しに影響を与える次なる不景気がやってくるかもしれません。

アラモアナホテルコンドの場合を見てみましょう。2005年に大規模改修が行われたこのホテルは1,150ユニットを抱えるハワイ最大のホテルコンドとなりました。ユニットのほとんどは300平方フィート以下の広さでキッチンの付いていない小さなスタジオタイプです。これは2008年から2009年に起こった経済危機以前の話です。キッチンのないユニットですらホテルコンド投資用ローンが資産価値比率80%ですぐに承認されました。当時オーシャンビューのユニットであれば16万ドル程度からありましたので、80%の高比率に夢の物件購入に希望を抱いく10,000組もの購入希望者が集まりました。

アラモアナホテルのキャッシュフローは常にギリギリの状況でした。しかし、建物は豪華でエレガント、バイヤーがマーケットに参入できる程度の手ごろな価格でした。

その後2008年から2009年に経済危機のあおりを受けて観光業の経済活動が半減しました。

オーシャンビューユニットの賃貸収入は月600ドルまで落ち込みましたが、固定経費(メンテナンス費、固定資産税)は月800ドル弱と変わりません。ギリギリだったキャッシュフローは月200ドルの赤字となりました。これに利息6%(当時の実際の利息です)のローン返済がある場合、キャッシュフローは月1,100ドルの赤字で、全ユニットが満室であっても毎月問題解決の目処が立たない状況です。

投資家はもともとこの小さなホテルコンドのキャッシュフローの将来性を基に購入を決断したはずです。キャッシュフローが減少または赤字となればバイヤーの資金は縮小し物件価値は下落します。

アラモアナホテルのオーシャンビューユニットはなんと8万ドルと50%も下落してしまいました。しかもこれは現金取引の場合です。オアフ島不動産マーケットの下落率10%と比較するとかなりの大暴落です。アラモアナホテルが多くが差し押さえとなり、フルキッチンのないホテルコンドはすっかり賃貸を止めてしまったのも納得です。

最終的には、アラモアナホテルの価格は回復しキャッシュフローも元どおりになります。本稿寄稿時点ではオーシャンビューユニットは25万ドル以上で取り引きされています。しかし、回復までには長い時間を要しました。

特に短期バケーションレンタルの場合、キャッシュフローは気まぐれです。ここから得られる教訓は、やがて起こる最悪の事態に備えておくということです。不運な事態は偶発的に誰にでも起こり得ます。私は個人的に(ブラックスワン、スキンインザゲーム、フールドバイランダムネスなどで有名な)ナシムタレブのファンですが、彼はこのように言っています。「川の平均水位が4フィートならば渡るのはやめておこう」

3) 納税

企画・許可局コンプライアンス室は職員不足なのか、やる気がないのか、能力かないのか、その一方で税務局はやる気と活力に満ちています。税金の申告や支払に関する責務を軽んじることのないようにしましょう。税務署との関係に猶予期間はありません。

ご自身の住んでいる場所に関わらず、1テナントあたり180日未満の賃貸期間の賃貸でワイキキのコンドミニアムから収入を得ている場合、下記の両方の納税義務があります。

1.) GET(消費税):消費税課税対象収入(経費を控除する前の総額賃貸料及び(徴収した消費税がある場合)消費税の合算)の4.5%
2

2.) TAT(宿泊税):宿泊税課税対象収入(経費を控除する前の総額賃貸料)の10.25

GETは清掃費や賃借人から回収したGETなど歳入すべてが対象となります。(但し、別途徴収されるTATは除きます。)つまり、管理費、マーケティング費、エアービーアンドビーのサービス利用費、メンテナンス費など連邦税の申告では控除できる経費を差し引く前の金額です。

多くのオーナーがここを正しく理解できていません!x

例1:  

ある月に賃借人から合計12,543.32ドル(賃貸料10,000ドル、清掃費1,000ドル、10,000ドルの賃貸料に対する4.712%のGET518.32ドル、10,000ドルの賃貸料に対する10.25%のTAT1,025ドル)を徴収したとします。

この場合申告とその計算は下記のようになります。

GET申告対象額:11,518.32ドル(12,543.32ドル(歳入の合計)-1,025ドル(徴収したTAT))

GET518.32ドル(11,518.32ドル×4.5%(GET税率))

TAT申告対象額:10,000ドル=TAT1,025ドル(10,000ドル(賃貸料)×10.25%(TAT税率))

※TAT申告対象額は180日未満の賃貸の場合、賃貸料のみが対象となります。清掃料や徴収した税金は申告対象外です。E

例2:

ご自身のコンドミニアムをエアービーアンドビーに掲載している場合はどうでしょう。最近エアービーアンドビーのサイトではGETとTATを別途徴収する対応はしていません。

ここでは、ご自身の所有するコンドミニアムにアエービーアンドビーを通じて予約が入り、賃料1,000ドルの他に清掃費125ドル、サービス料129ドルが支払われるとします。

歳入の合計額は1,254ドルです。

GET申告対象額:1,254ドル=GET56.43ドル(1,254ドル(歳入の合計)×4.5%)

TAT申告対象額:1,000ドル=GET102.50ドル(1,000ドル(賃貸料)×10.25%)

エアービーアンドビーのサイト上で、ゲスト到着時にGETを別途徴収するという説明が掲載されているのを見たことがあります。しかし、誤って賃貸料だけをGET算出対象としてしまいトラブルとなっています。

物件のオーナーとしてまたバーケーションレンタルのホストとして何をするのかはご自身次第です。弊社では適切な税の申告と期限内の納税をお勧めしています。GET及びTATの過少申告や遅延申請は刑罰・罰金の対象となり兼ねません。そのような事態は避けたいものです。

万一の監査が入った場合、税務署が行う過去の記録の詳細調査に時効はありません。税金の申請や支払いが不十分であった場合、税務署が物件に抵当権を付けるきっかけとなり売却の際の足かせになることがあります。

この手続きをできるだけ簡単に済ませるためにも弊社の関連記事及び関連動画GET & TAT in Hawaii – The Easiest Way To File and Payをご覧ください。

少しでも不安な事案ある場合は常にご自身の信頼する税の専門家またはハワイ州税務部(電話:808-587-4242)に相談しましょう。